高温多湿が当たり前の日本は、FFF方式3Dプリンターのフィラメント(材料)にとって非常に厳しい環境です。

- 3Dプリンターの造形物の糸引きが多い
- 湿気を吸ったフィラメントの対処に困る
- フィラメントを乾かすのに手間がかかる
こんな悩みを抱える筆者たち3Dプリンタユーザーを救うのが、フィラメント乾燥機「SUNLU FilaDryer S2(以下、FilaDryer S2)」です。フィラメントを温めて乾かす、2022年8月 日本発売した商品です。
2022年7月、筆者はサンステラ社より商品提供を受けました。それから3ヶ月以上もの間、毎日のように使い込みました。

この記事では、筆者がFilaDryer S2を使い込んだ結果から分かった、正直な感想を紹介します。(今どき忖度無しは当たり前ですが)
この記事を読んだ皆様が、FilaDryer S2もしくはフィラメント乾燥機の検討の一助になれば幸いです。

SUNLU FilaDryer S2 概要
SUNLU社は、3Dプリンターのフィラメントや周辺機器に特化した専門メーカーです。発展めざましい中国メーカーの中で、SUNLU社は中国・珠海に設立され、年間4200トン以上の3Dプリンターフィラメントを世界中に出荷する世界的メーカーです。詳しい説明はこちらの「メーカー SUNLU社について」をご覧ください。
株式会社サンステラが日本での独占販売権を得ました。その結果、2022年8月よりSUNLU社のフィラメント乾燥機「FilaDryer S2」が販売開始された経緯です。
なお、株式会社サンステラはPolymaker製フィラメントやCreality製3Dプリンタを扱う、3Dプリンター関連製品の総合商社です。筆者もフィラメント購入などで度々お世話になっています。
主な特徴

FilaDryer S2の主な特徴は以下です。
- 360°からフィラメントを最大70℃で加熱できる
- 乾燥時間を細かく設定できる
- 6.4インチ タッチパネルで簡単に操作できる
- PLA/PETG/TPU/ABS/PVA/PVB/PA/PC対応、パラメータを自動設定できる
- 乾燥しながら3Dプリンタ出力できる
- 電気用品安全法(PSE)認証取得済み

フィラメント乾燥機に欲しい機能は全て詰まってるね
旧モデル「SUNLU FilaDryer S1」の販売経験を経て、必要な機能はすべて詰め込んだハイスペック機になっています。
外観とスペック

製品サイズ | 高さ 265mm x 幅 274mm x 奥行き 118mm |
---|---|
最大容量 | 210 x 86(H)mm (1000g巻 x 1巻) |
重量 | 1190g (電源アダプター含む) |
作業想定環境 | 環境温度: 20℃~35℃ 相対湿度: ≦90 |
温度 | 35℃~70℃ |
電源アダプタ仕様 | 入力: AC100V~240V、50/60Hz 出力: DC:24V±1.2、2A |
スタンバイ電力 | 0.05W |
最大電流 | 1.9A |
最大動作電力 | 48W |
液晶ディスプレイ | 6.4インチ液晶ディスプレイ |
対応フィラメント直径 | 1.75mm / 2.85mm |
SUNLU FilaDryerBox S2 スペック表 (引用: FilaDryerBoxS2 | GREENFUNDING) |

フィラメント1巻(1Kg)の1.5倍くらいのサイズだね
筆者が使っているカラーはブラックですが、ホワイトもありますね。


個人的には汚れやほこりが目立ちにくいブラックが好きかな。
詳しくは下記で確認してください。

SUNLU FilaDryer S2でフィラメントを乾かす
SUNLU FilaDryer S2を筆者が3ヶ月に渡って、実際に使ってみた結果を紹介します。
操作がカンタン
FilaDryer S2の特徴の1つは操作の簡単さにある、そう筆者は感じました。
まずはFilaDryer S2の蓋を開いて、以下のように吸湿したフィラメントを収めます。特にロック機構があるわけではないので、迷うことはありません。

次に蓋を閉めて、背面の穴にACアダプタを接続すれば機材側は準備完了です。あとはACアダプタをコンセントに繋げば使い始められます。

正面がタッチパネルになっていて、パネル右下の「ON/OFF」アイコンをダブルタップすると起動できます。

下側にある4つのアイコンを操作して、「PV(設定温度)」と「Time(乾燥時間)」を調整します。このとき、個別に設定せずに「Material(素材)」を指定することで、自動的に設定温度を調整することも可能です。選べる素材は PLA/PETG/TPU/ABS/PVA/PVB/PA/PC の8種類。よく使われる素材は網羅されていますね。

素材を指定すれば良いだけだから簡単だね
設定が完了したら、「ON/OFF」アイコンをダブルタップすれば乾燥を開始します。

稼働中はLEDランプが点灯するため、停止している状態と区別が付きやすくなっています。
FilaDryer S2稼働中の動作音は、以下の動画で確認してください。
動画でご覧の通り、60℃の乾燥ならほぼ無音です。これなら自宅で頻繁に使用しても、家族にうるさがられることはなく安心して利用できます。

これで妻に怒られなくてすむよっ!(切実)
あとは乾燥完了するまで待つだけです。これまでの操作で迷うことは少なく、説明書を見なくてもある程度使いこなせるレベルでした。
高い乾燥能力
FilaDryer S2 最大の特徴は、その高い乾燥性能にあります。

- 印刷時・特許技術の 360°一周全体で加熱するヒーティングプレートを採用した
- 加熱効率が30%向上できる
- 短時間でムラなく均一に造形できる
- 吸湿したフィラメントを造形する際のリードタイムを大幅削減できる
従来のフィラメント乾燥機は、AmazonなどのレビューやTwtterでのツイートを見る限り、乾燥性能がイマイチという印象でした。しかし、このFilaDryer S2の乾燥性能は、筆者からは文句をつけるところがないくらい十分なものだと感じました。
この乾燥性能の検証ができ次第、改めて記事に追記する予定です。
乾燥しながら出力する
FilaDryer S2の特徴の1つに、乾燥しながら出力も可能です。その秘密はFilaDryer S2の構造にあります。
FilaDryer S2を開けると、以下のように2本の棒が設置されています。

この2本の棒の上にフィラメントリールが乗って、FilaDryer S2内で回転することができます。フィラメントの先は用意された穴から出して、そのまま3Dプリンタで出力できます。

ボーデン式(エクストルーダーにPTFEチューブ経由でフィラメントを供給する形式)であれば、以下のようなにPTFEチューブを挿して利用可能です。

実際にはFilaDryer S2からダイレクト式3Dプリンタにフィラメントを直接送って使えます。筆者の保有するPrusa i3 MK3Sはダイレクト式ですが、FilaDryer S2から直接フィラメントを中から出して、利用することもできました。ただ、その場合にも短くて良いのでPTFEチューブを挿した方が安心ですけどね。
乾燥させながら安定した出力をしたい人の要望にも応えられる仕様になっています。梅雨など湿気の高い時期に、PVB や TPU などの吸湿が早そうなフィラメントを使うなら良いですね。

この形状だと穴のないフィラメントリールでも使えるのが良いね
SUNLU FilaDryer S2の気になる残念ポイント
FilaDryer S2を使用してみて、筆者が気になったのは以下の4点です。
- 乾燥完了が分からない。ビープ音が鳴ると良い(スマホへの通知だと更に良い)
- ACアダプタが一体化した機構の方が良かった(取り外せる意味は少ない)
- ACアダプタ一体型/電源ケーブルが収納できると更に良い
- 機密性はない(保管用途には向かない)
3Dプリンタ関連の機材はちょっとした使い勝手を犠牲にしがちです。しかし、一般家庭での利用を広げていくのであれば、ちょっとした使い勝手も考慮してくれると、もっと購入する人の裾野が広がりますよね。

「生活家電ではなく精密機械」という免罪符で、3Dプリンタメーカーはサポートしてくれないことがあるから困るよね
次世代モデルでの改善を期待しています。
ちなみに、筆者が日常的に使用する限りは不都合は感じませんでした。細かい温度の差でおかしくなったり、フィラメントリールが溶けて使えなくなったりするような、致命的な問題は発生していません。極端な使い方をするのであれば注意が必要ですが、メーカーの推奨する使い方の範囲で、普通に使うならまったく問題が起こらないので安心してください。
SUNLU FilaDryer S2で安定して出力できるようになる
FilaDryer S2があれば、手軽にフィラメントを乾燥できます。つまり、FilaDryer S2が吸湿問題を解決して、3Dプリンタ出力を安定させられるわけです。
この記事を読んで、FilaDryer S2を購入したいと感じた3Dプリンタユーザーは以下からサンステラモールで購入すると良いでしょう。


ITエンジニア歴18年の3Dプリンタブロガー。
3Dプリンタで作った物をSNS投稿するのが趣味。自らが便利だなと感じたことは、誰かにシェアせずにはいられない性格。このサイトに掲載した情報が少しでもお役に立てば幸い。 ええ(English OK)