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PETGフィラメント+スパイラル(花瓶)モードが最高な理由とは?

スパイラル(花瓶)モードにPETGフィラメントを活用すべき理由とは?サムネイル
  • PETGフィラメントをもっと有効活用したい!
  • スパイラルモード(花瓶モード)ってなに?使い道は?
  • スパイラルモードに適したフィラメントはどれ?

PETGフィラメントは出力しやすく、丈夫で使いやすい素材です。スパイラルモードは短時間で薄い造形品を出力できる出力方式です。この2つ、実はすごく相性が良い組み合わせです。ご存知でしたか。

いつもの匠

3Dプリンタで毎日出力する いつもの匠 です。
一般家庭で3Dプリントを楽しむ方法を研究しています。

この記事ではPETGフィラメントをスパイラルモードで有効活用する方法を紹介します。この記事を読めば、スパイラルモード(花瓶モード)を有効活用できるようになり、短時間で欲しいものが作れるようになりますよ。

この記事は、3DプリンタのうちでもFDM(Fused Deposition Modeling/熱溶解積層方式)のみを対象となっている点は御注意ください。

目次

スパイラルモードってなに?

スパイラル(花瓶)モードとは

スパイラル(花瓶)モードは、3Dプリンタというよりはスライサーソフトウェアに実装されている印刷方法の一つです。

このモードの呼び名はスライサーソフトウェア毎に異なり、「スパイラルモード」「花瓶モード」「滑らかな外側輪郭」などあります。そこで、この記事では「スパイラル(花瓶)モード」と表記します。

スパイラル(花瓶)モードの特性

このスパイラル(花瓶)モードを使うと、ノズルが1つの連続した印刷経路を辿ります。

そのため、次のような印刷特性があります。

  • 一筆書きの要領で、途切れることなくフィラメントを出し続けながら印刷する
  • フィラメントを一定の速度で吐き出し続けながら印刷する(引き込み無し)
  • X軸 / Y軸は方向だけでなく、螺旋で積み重ねる形でZ軸(高さ)が変わるときも印刷しつづける
  • 壁の幅は1ライン(=ノズルのサイズ)の厚さとなるため、ほぼ必ず薄くなる
  • 若干速度は遅めに設定すべき(壁面印刷の速度は 25〜30mm/s が目安と言われている)

スライサー毎の設定

主なスライサーソフトウェアでスパイラル花瓶モードを利用する場合、次のように設定項目を使用します。

Ultimaker CURAのスパイラル花瓶モードは「特別モード」の中の「なめらか外側輪郭」を選択します。
Ultimaker CURAの場合

CURAの英語版だと「Spiralize Outer Contour」という表記になり、日本語の翻訳に差がある点は注意です。

PrusaSlicerのスパイラル花瓶モードは「プリント設定」の中の「レイヤーと外周」の、「スパイラル花瓶」スイッチを選択します。
PrusaSlicerの場合

PrusaSlicerの英語版でも「Spiral Vase」という表記なので、迷うことはないでしょう。

Simplify3Dのスパイラル花瓶モードは「レイヤー」タブの中の「単一のアウトライン・コークスクリュー印刷モード(花瓶モード)」を選択します。
Simplify3Dの場合

Simplify3Dの英語版だと、「Single outline corkscrew printing mode (vase mode)」という表記になります。こちらも迷うことは少ないはずです。

スパイラル(花瓶)モードのメリット

スパイラル(花瓶)モードで印刷するメリットとして、次の3点が挙げられます。

  1. 少ないフィラメント量で印刷できる
  2. 比較的早く印刷できる
  3. 薄いものを印刷できる

特に1のメリットは、3Dプリンタの印刷コストを削減できて魅力的です。また、3Dプリンタの大きな弱点である印刷時間が短く済むのも嬉しい限りです。これはフィラメントの射出を止めることなく印刷しつづけること、そして壁が薄いなど印刷する箇所が少ないことに起因します。

スパイラル(花瓶)モードのデメリット

スパイラル(花瓶)モードには、次のデメリットもあります。

  1. スパイラル(花瓶)モードで印刷できるデータが限られる
  2. 壁や底が薄くて割れやすい印刷物になりやすい

特に1のデメリットは厳しい制約になっていて、スパイラル(花瓶)モードは一筆書きできないものにはまったく使えません。例えば穴が空いている壁などは、1つのレイヤーで一筆書きできないために印刷できないのです。

また、一筆書きで壁を印刷するということは、頑丈な壁や底を印刷しにくいわけです。これがデメリット2です。そのため、PLAなどの堅い素材の印刷に使用すると、薄くて割れやすいものが出来上がることもあります。

PETGフィラメントがスパイラル(花瓶)モードに最適な理由とは?

これまでに紹介したスパイラル(花瓶)モードは、デメリットを補えれば便利な印刷方法です。

このスパイラル(花瓶)モードの2つのデメリットのうち、「薄くて割れやすい」という点については改善する方法があります。

それは(1)メチャクチャ堅い、または(2)柔軟性がある素材 を選べれば、壁や底が薄くても印刷物は壊れにくくなるからです。

前者(1)の解決策に該当するのは金属素材で印刷する方法です。

しかし、実際には金属を印刷できる3Dプリンタは、費用や使い方などの理由から、まだ一般家庭で購入できるような代物ではありません。

一方、後者(2)の解決策に該当するのは柔軟性のある素材で印刷する方法です。

この柔軟性のある素材としては、下記の素材(フィラメント)が該当します。

素材長所短所
ABS割れにくい
高音に強い
柔軟性がある
・高音での印刷が必要になる
・臭気が発生する
・印刷物が反りやすい
TPU柔らかくて割れない・印刷設定が難しい
・低速印刷が必要で
 印刷に時間がかかる
・少し高価
PETG・割れにくい
・柔軟性がある
・薬品に強い
・印刷が簡単
・上の二つよりは堅くて
 割れやすい

他にもあるかもしれませんが、執筆時点で主流なのはこの3つのフィラメントです。

この三種類のうち、ABSは臭気と印刷の難しさ、TPUは印刷の難しさと価格の面から活用しづらいと考えます。

価格の安さ・印刷しやすさ・柔軟性の高さを考慮すると、スパイラル(花瓶)モードにPETGが最適という結論になるわけです。

PETGフィラメントをスパイラル(花瓶)モードで印刷してみた

実際にPETGフィラメントを使って、スパイラル(花瓶)モードで印刷してみました。

印刷その1.お皿(円形)

最も簡単なものとして、小さな深皿を印刷してみました。

PETGフィラメントを使ってスパイラル(花瓶)モードで印刷した丸形のシンプルな深皿。色んな使い道があって便利です。
スパイラル(花瓶)モードで印刷した丸形のシンプルな深皿

比較対象として、スパイラル(花瓶)モードではない深皿を印刷した場合はこちら。

PETGフィラメントを使って通常印刷した丸形のシンプルな深皿。こちらも色んな使い道があって便利ですから、大きい形を作るときはこちら。
丸形のシンプルな深皿

壁部分の厚さが明らかに違うことが分かりますよね。

PETGなら壁が薄くても割れにくいので、このように潰してみたとしてもPETGなら壊れることはありません。

PETGフィラメントを使ってスパイラル(花瓶)モードで印刷した花瓶を潰してみると、驚くほど柔軟性があることがわかります。TPUほどではないですけどね。
スパイラル(花瓶)モードで印刷した花瓶を潰してみた

そのため、小さな子供に自由に使わせる皿として重宝しているわけです。

ちなみに、この印刷コストは1枚40.49円でした。安い!

丸形深皿のPrusaSlicerでのスライス結果、使用フィラメント16g、40.49円で済むわけです。
丸形深皿のPrusaSlicerでのスライス結果

印刷その2.お皿(楕円形)

楕円形の深皿も印刷してみました。こちらはサイズを分けて。

PETGフィラメントでスパイラル(花瓶)モードで印刷した楕円のシンプルな深皿を大小2種類作ってみました。
スパイラル(花瓶)モードで印刷した楕円のシンプルな深皿2種類

この形はすごく使いやすいようで、妻は子供達によくデザートを出すのに使っていますね。

PETGフィラメントをスパイラル(花瓶)モードで印刷した楕円のシンプルな深皿の活用例1は、果物を入れてベビーに食べさせる。
楕円のシンプルな深皿の活用例1

また、子供にとってはトミカがピッタリ入るので、気がついたらこんな感じにしていたりします。

PETGフィラメントをスパイラル(花瓶)モードで印刷した楕円のシンプルな深皿の活用例2は、トミカの駐車場…
楕円のシンプルな深皿の活用例2

ただ、白色の方が器(うつわ)としてはキレイだなと思いましたね。後から。

PETGフィラメントをスパイラル(花瓶)モードで印刷した楕円のシンプルな深皿は、白い方が料理が美味しそうに見えますね。
楕円型の食器(白)

ちなみに、この器の印刷コストは1枚56円でした。かなり安い!

楕円深皿のPrusaSlicerでのスライス結果、使用フィラメント22.31g、55.51円で済むわけです。
楕円深皿のPrusaSlicerでのスライス結果

印刷その3.お皿(四角形)

もう一つ、丸四角のお皿も作ってみました。

PETGフィラメントをスパイラル(花瓶)モードで印刷した丸四角形のシンプルな深皿も、白い方が料理が美味しそうに見えますね。
丸四角型の食器(白)

後ほどご紹介しますが、この皿にはスパイラル(花瓶)モードで印刷するための工夫があります。

この器の印刷コストは1枚37円でした。かなり安い!

丸四角深皿のPrusaSlicerでのスライス結果、使用フィラメント14.77g、36.75円で済むわけです。
丸四角深皿のPrusaSlicerでのスライス結果

PETGフィラメントをスパイラルモードで印刷するノウハウ

先に紹介したように沢山のモデルデータを印刷結果、次のようなノウハウが得られました。

PETGフィラメントの選び方

PETGフィラメントは安価で印刷しやすいと書きましたが、従来のPETGフィラメントは高価な部類でした。例えば、筆者が使うプリンタメーカーの純正だとこちらです。

品質は文句なしなのですが、ポンポン購入できる金額ではありませんでした。しかし、最近は中国メーカーが力を入れているようで、安価で十分な品質のものが出回っています。例えば、筆者が最近よく購入して利用しているのはこちらのReprapper製PETGフィラメントです。

よくセールもしており、ほぼPETGフィラメントでは最安値で、ホビーユースではオススメできます。もう10Kg以上購入していますが、今のところ問題のあるフィラメントに当たったことはありません。

あと注意することは、購入するフィラメントによっては巻きがキレイではないことがある点です。次の画像のように概ねキレイなんですけどね。ロットによって異なるのか何かは不明。

当たりのRepRapperフィラメントは巻きがキレイです。たまにハズレもあって、巻きが汚いこともあります。
巻きがキレイだった当たりのRepRapperフィラメント

今までまだ絡まったことはありませんが、巻きがキレイではなくても我慢できる方のみ検討するのが良いでしょう。

スパイラル(花瓶)モードに合うモデルデータの作り方

いくつかスパイラル(花瓶)モードに合うモデルデータには、いくつかコツがあります。

コツ1. モデルデータの中抜きをするべからず

Fusion 360などでモデルデータをスパイラル(花瓶)モード向けに作る場合、中身が埋まった状態で作る必要があります。

例えば、スライスする前のモデルとして楕円柱を読み込んだ状態がこちら。

スパイラル(花瓶)モード向けSTLデータのスライス前は、中身の詰まった柱状態です。
スパイラル(花瓶)モード向けSTLデータのスライス前

これをスパイラル(花瓶)モードでスライスすると…

スパイラル(花瓶)モード向けSTLデータのスライス後は、壁の薄い印刷物、つまり深皿の形になります。
スパイラル(花瓶)モード向けSTLデータのスライス後

壁の薄い印刷物、つまり深皿の形になります。

このように、スライサー側で壁と底を残した状態にしてくれるわけです。

このときの厚さはレイヤー(層)の厚さです。(PrusaSlicerの場合)

スライスするまで最終形が分からないのが、スパイラル(花瓶)モードの難しいところです。

ただ、印刷できない形の場合は他の普通の形と同じようにエラーが出るので、間違えたまま印刷することがないのは安心です。

コツ2. 印刷物の端は面取すべし

これはスパイラル(花瓶)モードに限らず、日常で使うものを印刷する場合すべてに対して言えることです。

端/角を面取りすべし

これをしないと必ず筆者は妻から「角が痛い!」と叱られます。主婦は厳しい…

でも、たしかに角を無くす もしくは 丸くしておいた方が手触りが良いです。

それを考えて、先に紹介した丸四角の皿の底を斜め(面取り)にしています。

底を斜めに浅く面取りしたデザインは、印刷に成功しやすいです。
OKパターン:底を面取りしたデザイン

この面取をつけると、同じ形の皿を積み上げ(スタック)られるようになるので便利です。

ただし、これを次のように底に丸み(フィレット)を付けると失敗します。

底に丸みを付ける、つまりフィレットにしたデザインは、印刷に失敗します。上手く印刷する方法が見つけられていません…
NGパターン:底に丸み(フィレット)を付けたデザイン

このデザインをスライスしたまでは良いのですが、印刷するとこうなります。

底に丸みを付ける、つまりフィレットにしたデザインで実際に失敗すると底が抜けがちです。無残…
NGパターン:底に丸み(フィレット)を付けた印刷結果

底の端を見て貰えれば分かりますが、印刷面が汚いだけではありません。印刷に失敗して底抜けになってしまっているのです。何度もいろんな形で試してみましたが、残念ながら底に丸み(フィレット)を付けたものは1度たりとも成功しませんでした。恐らくですが、FDM方式はこういう丸みを帯びた積み重ねが苦手なようですね。

ちなみに、底を斜め(面取り)にした場合も、あまり斜めの角度がキツくなると同じく底が抜けます。このことから、うっすら底を斜めに面取することがスパイラル(花瓶)モードで印刷するコツだといえますね。

コツ3. ノズル

ノズルは印刷するものにも依存しますが、スパイラル(花瓶)モードでは細いものより太いものの方が良さそうです。0.2mm より 0.4mm、0.4mm より 0.6mm という感じです。これは印刷可能な層の高さの最大はノズルサイズ×80%だからです。

PrusaSlicerのプリセットでも、ノイズサイズごとに異なるものが用意されていますね。

Prusa社のブログでも印刷できる層の高さについて紹介されています。

英語ですが、最近のWebブラウザは日本語翻訳機能が付いてますので、ぜひ翻訳してでも一読することをお奨めします。

印刷する層の高さが高い、つまり射出するフィラメントが太いほど、壁や底を厚くでき、印刷速度も上がるからです。

その代わり、積層がクッキリ出てしまってキレイさは落ちます。

そこは頑丈さと印刷速度をとるか、積層感の少なさをとるかというトレードオフになります。

ただ、スパイラル(花瓶)モードであまりに薄く印刷してしまうと、こんな感じに割れてしまいます。

どんなに柔らかくても、壁や底が薄いと割れやすいです。これはPETGフィラメントであっても仕方がありませんね。
割れてしまった小皿

この失敗から分かったように、太めのノズルで層の高さを高めにするのが良いようです。

PETGフィラメントで幸せな3Dプリンタ生活を送ろう

スパイラルモードはPETGフィラメントと組み合わせることで利用価値が高まります。特にコスパの良いPETGフィラメントと組み合わせれば、100円ショップにもコスパで勝てる印刷が可能になります!

スパイラルモードを駆使すると、下記のようなものが短時間で出力できるようになります。

  • 花瓶
  • 食器(皿やコップなど)
  • トレイ
  • 筒状の何か

今後は筆者もこの域に達するモデリング技術と印刷技術を、ぜひ身につけたいと考えています。この記事を読んでいただいた3Dプリンタユーザーのうち、1人でも参考になれば幸いです。

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